第1章 地球から夜空に願いをこめて

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「お母さん どうして泣いてるの?」 夜、今年小学校に入学した娘、流理の手を引きながら川の土手を歩いていた。 残暑がまだ残っている九月の夜、 川の土手はそよそよと風が吹き気持ちよかった。 涙? どうやら 夜空をみながら涙がでていたようだ。 流里のくるっとした黒い瞳が心配そうに私の顔を見つめていた。 「あ......なんかお父さんの事思い出してた。 お父さんも同じ夜空を見上げてるかなぁって。」 娘に涙を見られ恥ずかしくて言い訳しながら、慌てて指で目を擦った。 「お父さん、 どの星にいるかな?」 「そうね。星がありすぎてわかんないね。」 「私 お父さんのことお願いする」 ん?夜空にお願い? 「夜空に毎日お願い事をすると叶うんだって」 「そっか。お父さんの病気が早く治るようにお願いしよっか。 」 「治ったら私もお父さんに会えるかな?」 「会えるよ。きっと お父さんも流理に会いたがってるよ。」 「ホント」 「本当本当。」 ニコニコしながら答えると流理はぱあっとひまわりのような笑顔を返してきた。 「楽しみだなぁ。」 「楽しみだね。」 そう答えると白いワンピースを着た流理は腕を広げてその場でくるくる回りだした。 「土手からすべり落ちないでね。」 「大丈夫」と言いながら、流理はスキップで走り出した。 肩までの黒いストレートの髪。父親似の大きな目と、コロコロ変わる明るい表情はかわいさ一杯だ。 リュートがみたら目に入れても痛くないくらいかわいがるだろうなぁと思った。 流理の父リュートは宇宙人だ。病気にかかった彼が治療の為自分の星に帰って八年。 リュートはどうしているだろうか。 夜空を見つめながら彼のことに思いを寄せた。
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