第3章 行方不明の流理

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第3章 行方不明の流理

「おばちゃん 流理ちゃんが 流理ちゃんが。」 流理の友達、君江ちゃんがあわてて私に伝えにきた。 学校の裏山に5,6年生の生徒について入って行って迷子になっているらしい。 「おばちゃん、ごめん。俺らについて流理ちゃんが山に入ったんだけど知らないうちにいなくなってて......探したんだけど......」 集団登校で班長をしている匠が申し訳なさそうに立ち尽くしていた。 「とにかく案内して。」 私は匠くんについて山に行った。 裏山といってもそれなりに高い山だ。獣道をハイキングコースに使い、整備されてないところも多い。 風が......そういえば台風が近づいている。夜から大雨警報が出ていた。 「流理」  私は大声を出し流理が入ったという山の小道に入っていった。 流理がいなくなったというところを中心に探した。 雨が降り出し、だんだん風も強くなった。あたりが真っ暗になっていく。 流理...... 体に力が入らない。 頭の中はどうしていいかわからず思考が固まらずぐるぐるしている。 倒れそうになりながら、それでもどうにかしないと思い、足に力をいれ探しまわった。 手がかりも掴めなかった。 失望した気持ち一杯のまま、1度家に戻った。 その後、父が消防署に連絡して山に入ってもらったが、夜10時が過ぎても、流理が見つかったという連絡はなかった。 台風の雨風はどんどんひどくなり、雨戸に雨がたたきつけられ、風の音がうなった。 その音が、私の不安を増大させた。 私はただ流理の無事を祈るしかなかった。
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