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人間界の出来事-2
「本日のゲストは石田眞那ちゃんでーす」
「よろしくお願いします」
快はリビングのソファーに座って、少し身を乗り出すようにテレビを見ていた。眞那が映るテレビを見るのは久しぶりだ。いつもならチャンネルを変えるところだった。
売れた子役が成長して痛い存在になることはよくある。眞那はそうはならなかった。それどころか、タレント、女優、アイドル、歌手、どの呼び方でも上にトップをつけていいほどの活躍ぶりだ。それにもかかわらず、初心を忘れない謙虚さが好感度を上げていた。
一方、快は成長するにしたがって仕事はみるみる減って行った。小学校の高学年に入ってからは、ほとんど開店休業状態だった。
快は芸能界にはしがみつかなかった。そもそも気質が合わないと快自身思っていた。
中学入学を機に正式に芸能事務所を辞めた。誰にも知られることなく。
快は辞めたことになんの未練もなかったが、他にやりたいことがある訳ではなかった。何となく中学、高校を過ごし、中の中の成績で普通の大学に入学した。
大学3年になり、そろそろ就職を考える時期に来たというのに、快はますます自分のしたいことがわからなくなっていた。
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