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「兄貴、知ってたの?」
「氷夢華のことだったら、ずっと見てるからな。
氷夢華、元気な子、産んでくれよ」
兄貴はそういって、アタシを優しく抱きしめた。
鷹宮で産婦人科を受信したら、すぐに広まってしまうから
わざと遠ざけたはずなのに、兄貴はすでに手を回していて、
私たちの主治医は、兄貴が信頼した先生へと依頼された。
先の病院のドクターへのケジメもきっちりとした後、
アタシたちの出産までの道程が始まった。
兄貴が次から次へと手をまわして、
アタシの勤務環境はガラリと変わった。
週五日入っていたシフトは週三日に減らされて、
仕事内容も被爆リスクが少ないが中心になった。
何時の間にか、兄貴が購入してくれていたのは磁場除けの腹巻。
アタシは出産のその日まで、
兄貴や水谷さん・オカンの優しさを感じながら過ごし続けた。
突き出るように尖ったお腹をさすりながら、
その年の秋に臨月を迎えた。
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