8.お前の名は海生  

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「氷夢華ちゃん、いよいよね。  さて部屋に行きましょうね。  嵩継君は仕事あるでしょ。  こっちは私が見ておくから、とりあえず仕事に集中してきなさい」 そういって水谷さんは氷夢華を連れてアイツの病室になるはずの部屋へと向かっていった。 朝まで慌ただしく仕事をしながらもチラつくのはアイツのことばかり。 勤務時間が終わると、真っすぐに階段を駆け上ってアイツの病室へと顔を出した。 病室で氷夢華は痛みと格闘しながら、時間をやり過ごしているみたいだった。 「氷夢華ちゃん、陣痛が錠剤だけじゃこなくて点滴に切り替えたのよ。  少し前くらいからかしら、陣痛促進剤がききだしたみたいよ」 水谷さんが教えてくれるままにオレはそのままアイツの傍に居て、 痛みと向き合い続けるアイツの傍で、アイツが望む場所をさすり続ける。 少しでもアイツが楽になる様に。 陣痛開始から10時間くらいが過ぎた頃、アイツの出産は本格的になった。 助産師とアイツの主治医が立ち会う中、 合図に促されるように、いきむ氷夢華。 次の瞬間、何を思ったかアイツは「もうやだぁー。出るー」って叫んだ。 そんなアイツの叫びも、助産師さんは手慣れたもんでキャッチボール。 「安田さん、それ、赤ちゃんねー。  早く会えるといいわねー」 頭が出てきた後は順調で赤ん坊がアイツの体から出てくる。 赤ん坊は、おぎゃあっと産声を上げた。 ようやく出てきたそいつは、 すぐに氷夢華の体へとぴったりとくっつく。 「元気に男の子です。  お母さんは少しお休み頂いて、  赤ちゃんはこちらでお預かりしますねー」 その後も氷夢華の処置は続いて処置の後、 氷夢華はゆっくりと眠りについた。 そんなアイツの傍で、エターナルペンダントを握りしめながら、 アイツの寝顔を見つめる。
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