埋もれゆく満月

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科学者は口々に言った。 この世界の真理を知ろうとするほど、創造主である神がいると思わざるをえないと。 僕たちの世界に太陽はない。 地上が大量の汚染物質に侵された今、人間は地下にかつての地上のように住まいを作り国家を形成した。 絵本に出てくるオレンジ色の光、写真に写る眩い抜けた空、画家が描くきらめく夜の星。 人工の空は見事だったけど、きっと本物の空とは全然違う。 でも、どんなに願っても本物の空はもう見ることができないはずだった。 おじいちゃんが死ぬ前に言った、 「地上は今頃綺麗に清浄されているはずだから、もう一度くらい地上に出たかった」 その言葉を僕は信じている。 おじいちゃんの残した道具と、同じ志を持つ科学者仲間で検問を爆破し、コンクリや何千何億の層となった天井を破壊した。 音を立てて崩れていく、天井。 やっとの思いでひと一人分の地上への道を確保した。 身体中を覆う防護スーツとガスマスク越しに僕は地上と僕がつながるのがわかった。 地上は、おそらく「夜」だった。 あたりは一面の砂で、草一つ、生き物の息吹一つ感じられなかった。 本物の風が足元を走り抜ける。 写真や映像で見た「星々」が空を隙間なく埋めている。 ああこれが空だ。地上だ。 一つ、また一つ、星が尾を引いて煌めいた。 僕は、本で読んだように、祈った。 地平線から登る太陽が観たい。それを観たら僕は死んでもいいーーーーー 背中で砂の感触を味わいながら、僕は星に祈った。 瞬間、眩い閃光が目の前に広がった。 日の出?? 否、爆発だ。 追っ手が来たんだ。 砂ぼこり越しにぼんやり、 空の端がかすかに赤く、青く... もう少し....もう少しで日の出が見れるのに!!! もう一度爆発が起きて、 僕の身体は砂の中に埋もれ始めた。 僕は必死にもがいた。 しかし、砂は澄ました顔でさらさらと落ちる。砂をつかんでもつかんでも僕の身体は落ちるばかりだ。 空気を掴む手越しに一瞬、微かな赤みを感じて、僕はまた地下に落ちていった。 彼は気絶した。 しばらくして目を覚まして、誰からも返事がなくて、彼は少し泣いた。 彼は気がつかなかったのだ。 あたりに飛び散る地上の砂の中に、一つ、ただ一つ、植物の種があったことを。 そして、それは彼の涙を受けて目を覚まし始めたことを...
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