Epilogue Glass Tear

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* だれかが何かと口実をつけてはたか工房に集合をかけるのだが、今日もそうだ。 七月七日土曜日、七夕の日。 朝から集まってつくった七夕飾りが、熔解炉の熱から生じる気流の中で揺れている。 短冊にどんな願い事を書くか、ほんの一時間前は童心に返ったようににぎわった。 正直に書けば揶揄されると思い、叶多は迷いに迷って『世界平和』なんて書いてしまった。 『望みがデカすぎて即却下だな。身の程を知れ』などと陽からケチをつけられた。 いまは銘々が話したり、ガラスで遊んでいる――という表現どおり、やっぱり子供返りしているみたいだ。 叶多はガラスには手をつけず、ゆったりと休憩中だ。 机に肘をついて広げた手のひらに顎をのせ、躓くことのない指先の動きをうっとりと眺めた。 「戒斗ってやっぱり器用。久しぶりにやってるのに全然普通にやれてる」 作業机に向かう戒斗の正面に座って、叶多はうらやましく云った。
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