ありがとう

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僕が初めて彼女に連れられてあの場所に行ったのは、たしか4月の初めくらいだった。 「あたしのひみつの場所、とくべつに教えてあげる」 ある日彼女はいたずらっぽく笑ってそう言うと、きゅ、きゅと靴音をたてながら歩き出した。 僕はいつにもましてにこにこしている彼女が気になって、ちょこちょこと彼女の後ろをついていった。 しばらく彼女の背中を見ながら歩くと、灰色だったアスファルトがピンクみたいな赤みたいな色に変わって、目の前に現れた坂を上っていった先に一面の花畑が広がっていた。 むせかえるような花の匂いと、草を踏むたびに立ちこめる緑の匂いが僕たちの身体をいっぱいにした。 そこらじゅうにクローバーが咲いていて、僕たちはクローバーの中に包まれているみたいになっていた。
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