ごめんなさい

2/3
前へ
/16ページ
次へ
重い身体をひきずるようにして、僕はあの特別な色のアスファルトの上を歩いた。 もう僕を濡らす雨はほとんどやんでいたけれど、アスファルトの色があの時よりも濃く見えて、今度は赤みたいな茶色みたいな色になっていた。 あの時はあっというまに上れた坂道が、今はどんなに上っても終わりのない壁みたいに感じた。 僕は転がっていた石ころにつまずいて、ばたっと大きな音を立てて倒れてしまった。 疲れで悲鳴をあげる身体に、転んだ拍子にすりむいたひざの痛みに、僕は声を殺して泣いた。 どんなにつらくても、痛くても、僕を救ってくれるあの温かい手は、ここにはいない。 たとえあの手がここにあったとしても、今から僕に起こることを、彼女には見せたくない。 僕は止まらない涙をそのままにして、もう一度足を前に出した。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加