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重い身体をひきずるようにして、僕はあの特別な色のアスファルトの上を歩いた。
もう僕を濡らす雨はほとんどやんでいたけれど、アスファルトの色があの時よりも濃く見えて、今度は赤みたいな茶色みたいな色になっていた。
あの時はあっというまに上れた坂道が、今はどんなに上っても終わりのない壁みたいに感じた。
僕は転がっていた石ころにつまずいて、ばたっと大きな音を立てて倒れてしまった。
疲れで悲鳴をあげる身体に、転んだ拍子にすりむいたひざの痛みに、僕は声を殺して泣いた。
どんなにつらくても、痛くても、僕を救ってくれるあの温かい手は、ここにはいない。
たとえあの手がここにあったとしても、今から僕に起こることを、彼女には見せたくない。
僕は止まらない涙をそのままにして、もう一度足を前に出した。
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