はじめまして

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息を吸うたびに肺がきりきりと痛んだ。 走り続けているせいで雨ざらしの身体が熱い。 濡れてまとわりつく前髪が邪魔で、僕は乱暴に頭を振った。 その時僕は足元の水たまりに気づかなくて、思い切り足をその水たまりに突っ込んでしまったせいで顔までしっかり泥水がかかってしまった。 口の中まで泥水が入り込んでしまい、僕は思わず足を止めてぺっぺっと口の中のものを吐き出した。 一度止まってしまうと足が鉛のように重く、思うように動かない。 僕は力なく電柱によりかかり、乱れた呼吸を整えながら、荒れ狂う心臓の鼓動を押さえつけようとした。 なかなか治まらない心臓の音を聞きながら、前にもこんなことがあったと頭の片隅で思った。 冷たい雨のシャワーを顔に浴びながら、目を閉じるとあの時の記憶が瞼の裏にうっすらと浮かんできた。
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