はじめまして

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あの日、僕は降りしきる雨の中、今日みたいに傘を差さずにとぼとぼと道を歩いていた。 誰かに蹴られた傷がじくじくと痛んで、じんわりと目が熱くなった。 僕が頭をぷるぷると振ると、周りを歩く人たちが眉をひそめて僕を見て、それから足早に離れていった。 なんだかのどまでかあっと熱くなって、僕はたまらなくなった。 こんなところから逃げたくて走り出そうとしたら、おなかがきゅうっと鳴って、僕はそれもできなくなった。 自分の姿を誰にも見られたくなくて、僕は電柱の陰に隠れて座り込んだ。 僕はここで死んじゃうのかなあ、なんて思って。 それでもいいかなあ、と無感情に考えて。 それから何も考えたくなくなって、僕が目を閉じた時だった。
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