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どのくらいの間そうしていただろう。
僕たちの頭上で音を鳴らしていた雨粒は次第に数が減っていき、ついには何も聞こえなくなった。
彼女はおもむろに傘をたたむと、くるりと背を向けてどこかへ走り去ってしまった。
ああやっぱり、と僕は思って、彼女が来る前にそうしたように、瞼をゆっくりと下ろした。
彼女がいた時には忘れていた傷のじくじくが、今になってまたぶり返してきた。
僕は震えながら身体を丸めて、今は眠らなきゃいけないと思った。
眠らなきゃ、眠らなきゃと思って、僕はぎゅっと目を強く閉じた。
その時、ふんわりとした感触が僕の頭を包んだ。
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