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弾かれたように目を開けると、さっきの少女が僕の髪の毛をタオルでごしごしと拭いていた。
1滴だって水を残さないというような真剣なまなざしで、彼女は僕の頭から足まで全部を念入りに拭いて、最後にじいっとねめつけるように僕の身体を見て、そして満足げに笑って1つ頷いた。
「ぬれたまんまだとかぜひいちゃうんだよってママが言ってたんだ」
座り込んでいる僕の目線に合うように、彼女はしゃがみ込んでそう言った。
僕はどうしていいかわからなくて、彼女のことをまたじっと見つめた。
今、僕の中には小さな彼女がいるんだなあ、なんてことをぼんやりと考えた。
そうしていたら、目の前の彼女が僕に向かって両手を差し出した。
ふわふわとした、温かそうな、小さな手だった。
「一緒に帰ろう?」
彼女は僕にそう言った。
僕はいつのまにか、彼女の手に僕の手を重ねていた。
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