第15章 終わりのはじまり

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小さな頃から顔を合わせてた人たちが、いつの間にかそんな世界の住人になってしまってるなんて。 その片鱗を目の当たりにする機会を持った自分としては、そこまで必要なのか?と反駁もできない。コントロールし難いものを制御しようとするなら、通常じゃ発想もできないような力がないと…。 …でも。 「…彼女に会います。会って、話をして。…無事を確かめたい。せめて」 俯いて言葉を絞り出す俺に彼は素っ気なく言った。 「もう確かめたよ。身体に傷や痛がってるところはない。精神的なダメージはあるんだろうけど、そこは割り切ってちゃんと会社に出社してったよ。あいつは強いな」 「それは。…わかってますけど。それでも、直接話して、できたら会って。…今日の帰りにでも」 俺たちは終わりじゃない。彼女だって、俺に全然何の感情もない筈はない。嘉樹の話だけじゃわからない。顔を見て、気持ちを確かめたかった。 嘉樹は肩を竦めて、それならちゃんと責任持ってここまで送り届けろとだけ重ねて言い渡した。 速攻LINEを送って昼休みに電話をもらい、約束を取り付けた。以前と同じコンビニで顔を合わせた彼女は見た目だけでは何の変化も窺えなかった。 でも、ほんの昨日。あの部屋で待ち伏せされて無理やり連れ込まれて、四人の男たちに思い通りにされたんだ。クラブでの行為とは違う。知られていない筈のプライベートな空間に土足で踏み込まれてどんなに怖かったろう。そう思うとつい顔が強張り、それが彼女を怯えさせたのがわかった。慌てていつも通りに接しようとするけど何かが上手くいかない。 少しだけずれたような、歯車の噛み合わないような感覚が抜けない。やっぱり俺たちは今まで通り、何もなかった状態には戻れないのかな。もどかしさに焦れて思わずきつく抱きしめた。そっと仰向かせた彼女の瞳が濡れていた。思わずばくん、と全身が脈打つ。 夜里さんだって俺と離れたくないんだ。そう感じてくれてるならそれでいい。俺だって彼女と離れるなんて考えられない。二人とも同じ気持ちならきっと何とかなる。 ラブホテル初めて、と呟く彼女を見知らぬそっけない部屋で抱いた。彼女はいつも通り、甘く激しく応えてくれた。終わった後の充実感に浸って唇を重ねる。 これでいい。俺たちは何も変わらないんだ。これからも二人でいられる。 長く一緒にいれば状況だって変わっていくだろう。
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