第16章 始まりのおわり

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小さい頃の俺と一緒にいても遊んで相手してても、これが終わったら忘れないうちに書き留めておかなきゃとか次の展開思いついたから早めに続き書きたいとか。そんな風にそわそわしてばっかいたって、大人になってから懺悔されてさ。まぁ、言われてみればなんか時々話聞いてないよなこの人とか、落ち着きなくてばたばたしてるよなぁとかは思ってたけど、そういうもんだと思ってたから、母親なんて。ある程度俺が大きくなってからは本格的に書くようになって、ますます放っとかれることが多くなったけど。その頃は俺ももう自由な方がよかったから。お互い同じ家に住んでても適当な距離感で勝手にやってたな。あんまり寂しいとかもなく、うちはうるさいこと言われないから他所よりいいかってくらいだった。多分、俺とあの母親は割と似てるんだよ。性格とかものの考え方とかさ。親父は単に仕事が忙しくて不在なだけだったけど」 「ああ、はい、わかる気がします」 わたしは上目遣いに考えつつ言葉を選んだ。 「お母さんと加賀谷さんはすごく近いものを感じます。なんか、いろんなことをいちいち言葉にしなくても何処か通じてるみたいな…、やっぱり親子だからかなあって思って見てました。お母様とお話ししてる時、加賀谷さんと話してる時の感じに似てるって思ったの。あ、でも、お父さんもやっぱり加賀谷さんによく似てるよ。自分であんまり意識してないかもだけど。…なんかね、あんな風に明るくざっくらばんとして振舞ってらっしゃるけど実は神経質で気難しい面もあるのかなぁって。人前に立つ方だから、そこは意思の力と長年の経験で隠して抑え込んでるのかなと思ったの。むしろ、加賀谷さんの大雑把でざっくりした豪快な面はお母様から来てるのかなって。お二人ともつくづく加賀谷さんのご両親だな、半分ずつよく似てるなあって」 「お前意外とよく喋るよな。なんで俺のことになるとそんな饒舌なんだよ」 彼は思ってもみない方向から攻撃された、みたいに弱り切って横を向いた。思わず反射的に首を縮める。本当だ。今日のわたし、マジに喋りすぎ。 反省して黙り込むわたしに毒気を抜かれたみたいに彼はぼそぼそと話を続けて聞かせた。 「そういう母親だからさ。…俺も、大人になってからあの人の書いたものいくつか勝手に目を通させてもらったけど。…読んで感じたのは、へえ、やっぱりものの考え方とかって自然と似てくるもんなのかなと。
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