Wish upon a STAR

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 “待ってください……あくまで願い事は、一家につき、ひとつです”  “全員で話し合って決めるのではなく、この家でいちばん立場が上の御方の願いを叶えることになります”  “私の声が消え、私の姿が消えたら、ベランダに出て夜空に願い事をなさい、さすればどんな無理難題でも叶えられるでしょう……”  そうして、ささやき声と、圧倒的な光輝は呆気なく消えた。  目を開けた中山一家は、お互いの顔を見合わせると、ベランダの外に出た。  星たちがちらほらまばたく、藍色の夜空を見上げ、それぞれ無言で願い事を胸に浮かべた。 (この家でいちばん立場が上のもの。それは俺だ。何てったって、一家の大黒柱なんだからな)  自信満々に、お父さんは出世と昇給と砂漠化が進む頭皮がフサフサになるよう願った。 (この家でいちばん偉いのは私よ。縁の下の力持ち。私がいなければこの家は崩壊するわ)  確信しながら、お母さんは美容と物価下落と、道端で偶然イケメン韓ドラ俳優に出会えるよう願った。 (この家の主役は、何といってもミカだよね! パパもママも、ミカの言うことは何でも聞いてくれるんだから!)  得意満面で、ミカは新しいオモチャとゲームとお菓子を願った。  三者三様が尊大に願い事を唱える中、足元ではにゃーすけがにゃーと鳴いていた。
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