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夜空への願いが有料になったのはいつからだったろう。
ある日、宇宙連合環境協会と名乗る者達がやってきて今後は夜空への願いを有料化にすると伝えてきた。そんなバカなと皆反対をしたのだが、集まったお金は宇宙の清掃や星の維持等に利用すると言われ、星空を愛でる多くのロマンチストを抱えた地球人はその書類にサインをした。とは言っても祈る場所や時間や内容などに制限はなく、以前のように個人が自室のベランダや公園で星空に願ったところで誰も聞いてないであろうと高を括ったのがいけなかった。
どのような監視システムなのか解らないが”宇連会”の腕章をつけた彼らはどこからともなくやってきて、キッチリ料金を回収していく。出来高制後払いシステムなのはありがたいが、その料金は彼らが導き出した適正価格という名の言い値である。
私達はそうやすやすと星に願いをかけられなくなった。
軽い気持ちで祈ると痛い目をみることになるのだ。
もちろん、夜空は私達の願いをすべて叶えてくれるわけでは無い。
王子様との結婚や何もせずに東大に入りたいなどといった無謀な願いは叶うわけも無く、どちらかというと叶うのは現実的なものばかりであり、チケットの抽選や愛の告白の成功などは果たして願ったからなのか偶然なのか正直、五分五分と言った所なのだが、念のため願わずにはいられない人間の心理を見事についた商売だ。
「263万……そんな」
「いや、263万5000円だけどね。まぁお得意さんですしね、5000円はサービスしときますよ。え?お金ないの?じゃぁまたいつもの、いきますか?」
「……はい、お願いします」
「じゃぁ、明日午後3時にお迎えに参りますんで~まいど!」
宇宙連合環境協会の男は去って行った。
はぁ、また明日からバイトか……
全身から力が抜ける。
私は1週間前にそのバイト先から帰ってきたばかりだった。
今度は一体何日かかるだろう?
──まったくもう、うんざりだ。
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