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昔は「不幸の手紙」と呼ばれていたらしい。
「これと同じ内容の手紙を今日中に、10人に出さないとあなたは不幸になります」
そんな文面に踊らされて、受け取った人は10人に同じ内容を書き写し、出さなければならなかった。
「不幸のメール」というのもあった。
「これと同じ内容のメールを今日中に、10人に出さないとあなたは不幸になります」
手紙に比べればかなりストレスは減っただろう。内容をいちいち書き写さなくていいし、会ったこともないメル友にすれば、顔を合わせて気まずい思いをすることもなく、ただそれっきりになるだけだった。
誰が始めたのかは知らないが、かわいいテロとも言えた「不幸シリーズ」は、時代と共に楽になっていくのだと思っていた、というか、そんなこと深く考えたことはなかった。昭和の時代からあった「不幸シリーズ」が、平成を経て、今じゃかなり辛辣な、人生終わったと思わせる「不幸のロボット」になろうとは。
ロボットが僕のアパートにやって来たのは、一週間前の夜だった。
ピンポンと呼び鈴を鳴らすので、インターフォン越しに返事をすると「宅急便です」と言う。僕はドアを開けてしまった。
ドアが思い切り外側から強く引かれ、驚く暇もなく、子供のような身長で、銀色の物体が玄関に滑り込んできた。
「な、なに!?」
「西崎さんですね?不幸のロボットです」
「----・・・・・・・・・!」
「これから一週間、宜しくお願い致します」
「・・・・・・・・・」
「ルールはご存じですね?これから一週間以内に一人、誰かを殺して貰います。もし、できなかった場合は私があなたを殺します」
「い・・・・・」
嫌だ!誰だ、こいつを僕に送った奴は!
「ちなみに私を破壊しようとしても無駄です。私に触れると100万ボルトの電流があなたの体に流れます。絶縁手袋などでも無駄です。また、遠隔操作で私を破壊しようとすれば、私は自動的に爆発します。私の体には無数のパチンコ玉が埋め込まれてありますから、あなたも無事では済みません」
遠隔操作なら、無事に済むんじゃないか?
「ダメです。申し訳ございませんが、私にはエスパー機能も搭載されていますから、あなたが私を破壊しようと考えれば、私はあなたの側にぴたりと張り付き、最後までお供いたします」
「最後までって何だよ!」
「あなたが死ぬまでです」
「結局死ぬのかよ!」
「それはあなた次第」
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