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モチーフ
彼女が死んだ。
もって一年と宣告されてから、一年ちょうどに彼女は死んだ。
病魔と闘っているとき、彼女はやせ細り、燦然と美しく輝いていた目も光を失っていったが、笑顔だけはいつもと変わらなかった。
このまま、治るのではないか。彼女の笑顔を見ていると、そんな風に思うことすらあった。
だが、世の中そううまくはいかない。
彼女は、この世を去ってしまった。
今、僕は歩いている。
彼女が去ったこの世界を、歩いている。
時刻は午前二時。丑三つ時といわれる時間帯。
彼女が亡くなり、葬儀がすんだあとから、僕は毎晩のようにこの時間に散歩に出かける。
そうすれば、彼女に会えそうな気がするからだ。
毎晩毎晩、僕は小声で彼女にささやきかけながら歩いている。
どこかにいる? 僕の声は聞こえてる? 君からは僕の姿が見えたりしているのかな?
そんな風にして、僕は夜の中を歩いていく。
彼女が亡くなった寒い季節は終わり、もうすぐ夏が来る。彼女が好きだった夏が。
僕は今日も夜歩く。
彼女は、星を見るのが好きだった。よく二人で星を見に夜中出かけたものだ。
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