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「それはね、死んでいるのと同じですよ。いや、大袈裟かな。自分にも当てはまることだから感情的になっているのかもしれない」
裸の男は自動車販売店を見つめる。
「私ね、ここで長く働いていたんですよ。そこそこ成績もよかったんですよ? これでもね」
「やめてしまわれたんですか?」
「ある時、ふといやになってしまって。私は、なぜこんな生活をしているのだろうと。みんなそんなこと思っている、それを我慢しているのだと言われるでしょうが、私はどうしてもその疑問を打ち消すことができなかった」
裸の男が苦笑する。自分を嘲っているようにも見えた。
「有休をもらって、旅に出たりもしました。でもダメだった。いろんなことも試しました。それでもダメだった。そこで、ようやく気付いたんです。私の心はもう死んでしまったのだと。仕事が嫌だとか、そういうことじゃなかった。そんなものはとっくに通り過ぎていた。職場に復帰して、仕事をこなしながら、私は決めたんですよ」
「なにを、ですか?」
裸の男は答えなかった。ただじっと店を見つめている。
「こうして見ていると、愛着があったんですな。嫌なことのほうが多かったが、私はここが嫌いではなかったのかもしれない」
裸の男はこちら見て、言った。
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