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――――――――――
「――……ッ……智乃!!」
「……!」
声が聞こえた。少し掠れていたけれど、それでも力強く私の名前を呼ぶその声。聞き慣れているはずなのに、それはずっと心地よく鼓膜を振るわせる。
「はる……や……?」
聞き間違えるはずはない。向こうから駆けてくるその姿も、確かに彼のものだ。
驚きのあまり、声が上手く出てこなかった。
呼びかけにも、ちゃんと応えられなかったけれど。
私は、気付くと彼の腕の中にいた。
力強く抱きしめられて、苦しさよりも先に、温かな安らぎが胸の中に満ちていく。
そこは、私のよく知っている場所だった。
遠くのどこかじゃない。見上げた星空も、さっきよりずっと綺麗で。
……願いは叶った。もう、これ以上望むものなんてない。
私は、そこで目を覚ました。
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