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――――――――――
「――ん……」
目を開けると、見慣れない天井があった……ように一瞬思えた。
懐かしくて、とても鮮明な夢だった。だから、まるで時間が飛んでしまったように錯覚してしまったんだろう。
「……!?」
ゆっくり体を起こすと同時に、突然ベッドの上の携帯が鳴り始めた。それが着信音だと気付いた瞬間、湧き出した期待に突き動かされるように、私は急いでそれを取った。
「もしもしっ、遥也っ!?」
これで違っていたらどうしていたんだろう。焦りすぎた私は、つい画面も確認せずに通話ボタンを押していた。
『お、おう……』
幸い、結果は期待していた通りだったけれど。
『悪かったな。バイト中で出られなくて』
「あ、えっと……ごめん、それは前に聞いてて知ってたんだけど……」
『ん?』
「……そ、その――」
どう言えばいいのか分からなくなって、不自然に言葉を途切れさせてしまう。それに何か思い当たることがあったのか、彼の口調が急に焦りを帯びる。
『まさか、また風邪ひいたのかっ!?』
「あー……ごめん、そうでもなくて」
本気で心配させてしまったようだった。どうしよう、何だか申し訳ない……。
「――あ、あのさ。今日、星が綺麗じゃない?」
やっと思いついて出た言葉が、それだった。
『ん? ……ああ、そうか。今日、七夕だもんな』
「今、見える?」
『ちょうどバイト帰りだからな。見上げれば満天の、って感じだよ』
「……。そっか」
もう一度窓の外を見つめる。星空は変わらずそこにあった。
「遥也、覚えてる? 高一の時の、七夕祭りのこと」
『ああ。そりゃ、なかなか大騒ぎだったからな』
「う……ごめんなさい」
よほど強いショックだったのか、結局私はあの場所で一時間以上も気を失っていたみたいだった。あまりにも帰りが遅いので、お母さんたちが心配して何度も電話を掛けてくれていたのに、結局それも電池切れで繋がらなかった。もしかしたらと遥也の家にも連絡が行って、それで私が帰ってきていないことを知った彼が探しに出てくれたのだという。当然風邪もまだ治っていなかったのに。
『まさかとは思ったけど、ほんとにあの場所まで行ってるんだもんな。それに何か傷だらけだったし』
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