親方、棺桶から女の子が!

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翔がこぼすと、ひろしは 「仕方ねえだろ、仕事なんだから。」 と答えた。それでも不安そうな翔に、ひろしはさらに答えた。 「まあ、幽霊も真昼間には出ねえだろ。今日は作業は夕方前には終わる。」 「やっぱ、あれって幽霊なんすかねえ。」 翔がまた泣きそうな顔をした。 「さあな、化け物には変わりねえ。」 ひろしは、幽霊に関しては懐疑的であった。ひろし自身が、目で見えるもの以外は信じることができない、現実主義であるがゆえかもしれない。あの女は確かに存在し、そして忽然と消えた。 車の窓を開け、外の空気を入れると、ひろしの鼻腔をふと、ハッカの匂いがかすめたような気がした。 あれは、まだ、ひろしがこの翔のように若く、何も怖いものが無かった時代だ。 ひろしは、この若造のように、軟派ではなく、かなり硬派で尖っていた。今の解体業になる前は、この会社はまだ街金で、トイチと言われる高利で金を貸す、かなり阿漕な商売の金融会社だった。 ひろしは、いわゆる取立て屋として雇われていた。借りた金を返さないほうが悪い。ひろしはかなりの確立で金を回収することに長けていた。中には、金を返さずにトンズラする奴らも居たが、必ず見つけ出して回収した。     
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