第1章 はじまり

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僕は、33歳独身。サラリーマン。外見は中の上。性格は真面目で、学生時代の水泳部では主将を務めていた。大学入学を機に東京で一人暮らしを始め、そのまま東京で就職をした。職場では、上司から責任のある仕事も任せられて、後輩の指導も熱心に取り組んでいるつもりだ。僕はこの数年、狂うように働いていた。 「渡部さん、今日はありがとうございました。とても助かりました。」 佐藤由紀さんは僕の5つ下の職場の後輩で、この4月から僕のチームに異動となった女性だ。 僕は佐藤さんのサポート役だった。 「いや、佐藤さんのプレゼンわかりやすかったよ。明日も引き続きよろしく」 「はい、明日もがんばります。ところで、渡部さん今日このあと予定ありますか?」 僕はハッとした。 「空いているけど・・」 女性に誘われたのは久々だ。いや、まだ誘われたとは決まっていない。 「もしよかったら、近くにおいしい居酒屋さんがあるので、如何ですか?」 佐藤さんは凛とした顔立ちをしているが、どこか親しみのある顔をしている。 たまにはいいか。僕は誘いに応じることにした。 「・・よし、いこうか」 佐藤さんはニコッと嬉しそうな表情をして、店まで僕を案内した。こうして、僕の数年ぶりの女性との食事が始まった。   「渡部さんは、趣味とかあるんですか??」 「そうだな・・数年前までは映画とかよく見てたけど、最近は趣味という趣味はないかな」 我ながらつまらない回答をしたと感じた。 「私も映画好きですよ。邦画だと、堤幸彦監督の作品とか。洋画だと、バイオハザードとかゾンビものも見ます」 佐藤さんがゾンビ映画好きだとは意外だった。 僕は、映画が好きだった。 休日はよく映画館に行って、大々的に宣伝されている映画から、ミニシアターでやっている映画も見ていた。映画鑑賞後は、公園に行って散歩したり、食事しに行ったり。 そんな昔の記憶が蘇ってきた。  「そうなんだ、僕も堤さんの作品もバイオも好きだよ。昔はよく見てたかな」  「じゃあ、今度一緒に映画でもいきません? 丁度見たい映画があるんです。」  僕は照れ臭そうに了承した。
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