夜空への願い事

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 鉛色の支柱が支える逆さのピラミッド。銀に輝くピラミッドは、台座の役割を果たしている。その台座のうえでは黄金の小さなキューブが高速で回転しながら浮かんでいる。 『カイル!』  何かに呼ばれた気がしたが、それよりも靴底にまとわりつく生暖かいぬかるみの正体を、教会の壁を染める深紅のペンキの正体を、ここに転がっている何かの正体を、僕は知らなければならない。  転がっているのは二種類だ。祭壇の前には、カルト教団の意匠を記したローブにくるまれた何か。入り口付近には、鎖で手足を拘束されたぼろ布を纏った何か。前者は充実した健康的な体付き。後者は枯れ枝と見紛う細い体。前者は生の全盛を迎えた――後者は老若男女の区別なく――知らない、やめてくれ――救って――やめてくれ。 『カイル!』  アレクシスの怒声に、僕は弾かれたように周囲を探る。すぐに生存者を見つけた。祭壇からは遠い、入り口に近い位置。人が折り重なっている下で、切れ切れの呼吸を繰り返している。  事態を正しく認識することを拒否した僕は、生存者を確認した瞬間、意識する間もなく僕は地図上にマーカーを記していた。赤の、敵性を示すマーカーを。即座にアレクシスが反応する。教会に並ぶ長椅子の上を跳ねるようにかけて、マーカーの位置まで行くと、迷いなく彼らの上から銃弾をばら撒く。  祭壇を振り向いたアレクシスから、通信が入る。     
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