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『カイル、残敵数は?』
『タンク6。ドローン14です』
『だいぶ減ったね。あんたは引き続き――』
『ルイーザ。カイルをこっちに寄越してくれ』
ルイーザの通信をアレクシスが遮る。普段とは雰囲気の違う、冷たい声音。
『あらかた片付けた。星願器も確認。減速したが未だ稼働中』
『了解だ。外はあたし一人でいい』
バリケードの陰でルイーザが教会の方を顎で示す。指示に従い、僕は射線を意識して腰を落としたまま動き出す。銃弾に後を追われ、僕は教会に転がるように飛び込んだ。
体を教会の石畳の床に投げると、水たまりを叩いたような液体の爆ぜる音が足元で生まれた。次に来るのは強烈で濃厚な鉄の臭いだった。光が差さない教会は、地面から這い上がった闇で暗く染められていた。グレーに近い白の壁面が今は、黒く、いや、赤黒く染まっている。
『カイル。アレから半径5メートルの範囲に居る生存者を確認しろ』
教会奥の祭壇。その手前で振り向いたアレクシスが、祭壇の上を指さす。
「星、願器」
その名を知れず口に出していた。
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