夜空への願い事

9/20
前へ
/20ページ
次へ
『カイル、残敵数は?』 『タンク6。ドローン14です』 『だいぶ減ったね。あんたは引き続き――』 『ルイーザ。カイルをこっちに寄越してくれ』  ルイーザの通信をアレクシスが遮る。普段とは雰囲気の違う、冷たい声音。 『あらかた片付けた。星願器も確認。減速したが未だ稼働中』 『了解だ。外はあたし一人でいい』  バリケードの陰でルイーザが教会の方を顎で示す。指示に従い、僕は射線を意識して腰を落としたまま動き出す。銃弾に後を追われ、僕は教会に転がるように飛び込んだ。  体を教会の石畳の床に投げると、水たまりを叩いたような液体の爆ぜる音が足元で生まれた。次に来るのは強烈で濃厚な鉄の臭いだった。光が差さない教会は、地面から這い上がった闇で暗く染められていた。グレーに近い白の壁面が今は、黒く、いや、赤黒く染まっている。 『カイル。アレから半径5メートルの範囲に居る生存者を確認しろ』  教会奥の祭壇。その手前で振り向いたアレクシスが、祭壇の上を指さす。 「星、願器」  その名を知れず口に出していた。     
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加