溺れる家

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見たままだな……と妙に落ち着いた気持ちでいると、それが気に入らなかったのか、 「どうして、もっと早く見つけてくれないの」 と、軽くなじられた。 母の言い分では、刺身包丁を片付けようとして、誤って切ってしまったらしい。 包丁を片付けようとして、あんなところ(手首)なんて切るかな? だいたい、使う目的の魚が見当たらないし。 いろいろ不可解に思いながらも、 「切った方の手を心臓より高く上げて」 「二の腕辺りをタオルで縛るよ」 やたらにテキパキと、手当てに取り組んだ。 「念のため、病院へ行く?」 「…いい」 途端に母は、しおらしくなった。 確かに、派手に血が流れたわりには傷が浅いようだった。 「今日は、お父さんのところへ行くのは止めよう」
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