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「……ごめんね」
うずくまったままの母は、もう一回り小さくなった。
「完全看護だし、毎日行く必要ないよ」
1ヶ月前に不況の煽りを受けて造船所のリストラ対象になった父は、その時期を待っていたかのように胃潰瘍をこじらせ吐血し、現在も入院中だ。
生体検査の結果、進行性の癌だと分かったのが2週間前。
「宿題あるから、部屋へ行くね」
「何か、食べるもの作ろうか?」
「いいよ、休んでて」
手当ての間中、母から漂うアルコールの臭いが不快だったが、黙っていた。
また、元に戻っちゃったな……。
後20年はローンの残るこの家を、母は手放すことが出来るのだろうか。
「やっぱり、後で、おうどん作って持って行くから!」
先ほどと打って変わってテンションが高めの母の声を背後に、足早に階段を踏みしめる。
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