眠れる教室

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彼は、「ワタカベ」君は、あちら側の人間に違いない。 ドMのド変態だけど。 選ばれた人。 恵まれた人生を送れる人。 私だって、そうなるはずだった。 ついこの間、14歳の夏までは。 もうすぐ夏休みが始まる。 9月が来れば、15歳になる。 それまでの2ヶ月を憂鬱に過ごすことばかりを考えながら、マユコはとうとう前髪の張りついた額を冷たい机の天板に押し当てた。 海の中に潜ってしまったかのように、教師の朗読する声が、遠く小さくなった。
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