溺れる家

2/7
前へ
/100ページ
次へ
卓球部の部長を務めていたマユコだが、春の大会を最後に引退していた。 地区では毎回ベスト4に入る、というそれなりに強いチームではあったけれど、それ以上でもそれ以下でもない。 夏が来ると同時に、3年生は退かざるを得ないのだ。 「皆が受験できるわけでもないのにね」 部活を辞め、帰宅が早くなったことを一番に喜んだのは母だ。 「マユちゃんと、たくさん話せるわね」 これまでだって、充分に話していたと思うのだけど。 夏の日の長さも手伝って、明るい時間から母と2人きりで過ごすのは、何となく憂鬱だった。 それでも帰る場所は、ここしかない。 「ただいま」 静かにドアを開ける。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加