5/5
前へ
/14ページ
次へ
「何してるんですか!」  ベッドの柵にシーツを引っ掛け、首を括ろうとしていたら、後輩に見咎められた。 「放っておいてくれ。もう嫌なんだ。生きている意味が見出せない。毎日が辛い。辛い。辛いんだ・・・・・・」  伏せた顔から涙がこぼれる。  そんな俺を揺さぶり、後輩ーー高坂は必死の口調で言い募る。 「駄目ですよ、何言ってんですか。やめて下さいよ。先輩には、佳織さんが・・・・・・」 「いないよ。佳織とは、別れた。もう俺には誰もいない」  高坂は絶句した後、大きく首を振った。 「お願いします。先輩。生きて下さい。お願いしますから」 「もう放っておいてくれよ、高坂。お前には、関係ないだろう」 「・・・・・・お願いします」  高坂は俺の腕を掴んだまま、深々と頭を下げた。  ぽたり、ぽたりと、その足下に水滴が落ちる。  何でだ。  何故、こいつは俺を放って置かないんだ。  何故ーー見捨てないんだ。  俺は途方に暮れて、窓へと視線を泳がせた。  哀しくなるくらい青い空が俺達を見ている。  しばらくして、高坂が小さく呟いた。 「・・・・・・俺が先輩の半分になります」
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加