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「怜さん・・・紗羅を急かしてはダメ!赤ちゃんが居るんだから・・・」
お母さんの言葉にお父さんはフリーズして、足を止めた。
「紗羅お前…妊娠してるのか?」
「うん、まぁ~」
私はバツの悪い顔で返した。
「・・・いつ分かったんだ?」
「一週間前かな・・・」
「・・・知らないのは家族で俺だけか?」
「うん・・・」
「・・・」
私とお父さんの間に気まずい空気が流れた。
「俺に言わなかったのは怒ると思ったのか?」
「まぁね・・・」
「そんなめでたいコト・・・怒らないぞ・・・」
「・・・」
「・・・そっか・・・俺に孫ができるのか・・・」
「お父さん?」
「・・・カラダ大切にしろよ・・・」
「うん・・・」
お父さんは腰に手を当てる。私はお父さんの腕に腕を絡めた。
「早産で産まれたお前にはもしかしたら、障害があるかもしれないと医者に言われ、頭が真っ白になったのを憶えてる。
でも、障害はなく、お前はこうしてスクスク育った。
そして、結婚する・・・こうして、お前をヴァージンロードを歩くのが・・・父親である俺の最後の仕事だな・・・」
「お父さん・・・」
「行くぞ、紗羅・・・」
「うん」
お父さんは仕事人間だと思っていたけど、家族思いの優しい父親だった。
不器用な性格だから、私は誤解していた。
私達は佐久也の待つチャペルへと歩いていく。
(完)
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