第3章 すれ違う二人

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アンニュイ野郎とKさんが付き合っているということを知った私は、かれこれ1年前にアンニュイ野郎と一度デートした仲であったことを思い出した。 あのとき、一瞬でもアンニュイ野郎に惹かれていた自分も思い出した。 そんなときもあったな、と遠い目をして懐かしむと、二人が付き合っているという事実を素直に祝福できない自分が少しばかりいた。表には出していないが。 相反し、素敵な卒業制作の監督とヒロインがくっ付くなんて、クラスのみんなが祝福しないはずがなかった。 クラスメートがKさんから聞き出した話によると、驚いたことに、告白したのはKさんからだという。 Kさんは、映画制作に没頭するアンニュイ野郎にいつしか惹かれ始め、映画が完成した後に気持ちを伝えたのだ。 アンニュイ野郎も幸せ者だ、そう思った。
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