3人が本棚に入れています
本棚に追加
私とアンニュイ野郎のすれ違いは、初デートのときにはじまっていた。
「アンニュイ野郎はSが好き」という私の説は間違っていた、ということである。
アンニュイ野郎の”Sさんってかわいいよね”という発言には特別な意味はなく、ただ会話の一端にすぎなかった。
私はそんなことには気が付かず、デートの一部始終や「アンニュイ野郎はSのことが好きだから、Sに近づくために私を映画に誘ったんだ」という説をペラペラと話していたわけである。
私がそんな話をしている、という噂がどこからかアンニュイ野郎の耳にも入り、彼はそれ以降私へのアプローチはしなくなった、ということだ。
簡単な話、映画に誘われたという事実がありながら、他の女子をかわいいと言った発言のみを切り取り、私一人で勝手にヤキモキした結果、かけがえのない高校生活で得られたはずの青春の恋をつかみ損ねたのである。
最初のコメントを投稿しよう!