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「雨が降ったら桜の花がどんどん散っちゃうね」
「俺はそんなに好きじゃないからいいけれど。てかもうほとんど散ってるじゃん」
「もう。お花、凄く綺麗じゃない。死の象徴って何かいやだな」
「だって昔からそう言われてるし.....」
同じ発音をする名を持つ彼女が口を尖らせる。
拗ねたりする時のこの癖は幼い性格の彼女によく似合っていて、可愛く思えた。
「でも、桜を見て死をイメージするのって日本人だけなんでしょ?」
「んー、まぁ咲いてすぐ散る桜は、現世に執着しないで義のために命を捧げるっていう武士の生き方の象徴って言われてるよな」
「私ね、調べたんだけれど、桜は再生の象徴でもあるんだよ。『さく』が大和言葉で再生って意味なんだって。散ってまた次の季節に咲く姿が再生をイメージさせるって」
「輪廻転生ってこと?」
「そう。死と再生の象徴って何だか不思議だね」
いつの間にかケーキを平らげた咲羅が半分になった俺のチョコレートケーキを眺めている。
無言で差し出すと暫し躊躇した後、それを受け取とると照れながらもごもごと礼をされた。
甘いものは別腹だと彗がよく言っていたのを思い出したけれど、やはり女の子というのは皆そうなのだろうか。
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