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「死んだらどうなるんだろうな」
ちょうどポタリと手の甲に水滴が落ちる。
咲羅が慌てて折りたたみ傘を鞄から取り出した。
俺は彼女の手から傘を取り上げると、頭上に差してもう少し近寄るよう促す。
小さな折りたたみ傘は二人が入るには少し窮屈で、ぐっと近寄った咲羅の肩が俺の腕に触れて顔に熱がこもり始めるのを感じた。
「死んだあとは、お迎えがきて。それから天国で生まれ変わらせてもらうんだよ」
雨の音は徐々に強まる。
近すぎるこの距離のおかげで、咲羅の小さな声を聞き逃さずに済んだ。
「天使が迎えに来るのかな」
「ふふ、そうかもね」
「俺たちは、また.....会えるかな」
地面を跳ねる雨粒を目で追った。
ザアザアという強い音が、目の前を覆う強い雨が、俺たちの周囲のいろんなものをかき消していく。
本当に世界に二人だけ取り残されたような、線の内側に二人ぼっちになったような気がして。
けれど、けして嫌ではなかった。
「会えるよ。だって、もう一度会えたもん」
咲羅の頭が俺の肩に乗せられた。
乗せられた頭は熱を持っていて、きっと彼女の顔も赤く染まっているのだろうと思うと少し安心する。
跳ねた水滴が俺たちの足元を濡らして、靴に染み込む。
雨脚が弱まるまで、俺たちは無言のまま落ちる水滴を眺め続けていた。
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