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「銀河くんの真似」とこちらを見上げてにこにこしている。
俺がいつも話す空想の真似事と言いたいのだろう。
少しばかり思案してから俺は雲の隙間を見つめながら答える。
「そうしたら、電車は緊急停車するだろうから、俺は咲羅の手を取って『近くで見に行こう』って言う」
「逃げないの?」
「折角ドラゴンなんてのが目の前に現れたんだから、近くで見たいだろ」
「えー、殺されちゃうよ」
「咲羅が主人公だったら、そこで救世主が現れる。騎士の格好をしたいけ好かない男が、お探ししました我らが姫よ! って」
「ふふ、銀河くん厨二病だー」
「俺はきっとそいつとは馬が合わないな。ドラゴンを倒して一緒に別の世界に連れてこうとするそいつに、俺も連れてけって言う」
「じゃあ、彼がいたら頼もしいからお願いしますって私も口添えするね」
「上から目線」
「だって私、お姫様なんでしょ?」
そんな空想を繰り広げているうちに咲羅が降りる駅に到着した。
「また明日」と彼女が言って、俺は頷いて手を振る。
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