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あと、五日間。
もう一度その意味を噛み締める。
恐怖はもうだいぶ薄れた。
実感は正直まだない、しかし決まりなのだ。
事故の衝撃で記憶が混乱しているだけだと言ってしまうことも出来たのに、何故か俺は天使として現れた彗とのやり取りが現実であったと明確に断言出来る。
理由は分からないけれど、日曜が過ぎれば俺は確実に死ぬのだという感覚が頭にある。
あれから彗は現れない。
どこかで覗き見しているのかな。
このまま姿を見せてくれないのなら、もっとよく目に焼き付けておくんだった。
天使の羽が生えたあの美しい女の子を。
きっと女神がいたらまさにあんな感じなんだろうな。
「褒められすぎると照れますね」
ふいに耳元で声がした気がして飛び起きる。
当たりを見回しても誰かがいる気配はなかった。
寝ぼけていたのかもしれない。
明日は早いのだ、そろそろ寝よう。
目覚ましをいつもよりも一時間近く早くセットして布団に潜り込んだ。
寝る前に「明日、遅れるなよ」と咲羅にメッセージを送ると、怒ったようなスタンプが帰ってきて笑う。
スマートフォンを脇に置いて目を閉じた。
彗と咲羅が、あの桜の下で楽しそうに談笑している。
そんな不思議な夢を見た。
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