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「じゃあ、今日も皆で夕飯だな。父さんも早く帰れるように頑張るぞ」
ネクタイを締め直した父が笑顔で俺に告げる。
「あまり無理しなくていいよ」と、俺も笑顔で返してトーストにかぶりついた。
傍らでは俺たちのやり取りを母が嬉しそうにしながら見つめている。
ああ、そうだこんな感じだ。
俺が想像していた家族というのは。
少しでも心に余裕ができれば、周りを見ることができれば、随分と自分以外の誰かに優しくできるものなのだと思った。
見方を変えるだけで、世界はこんなにも変化するものなのだと、今更になって気付くなんて、随分と遅すぎだ。
トーストに染み込んだバターの味が口内に広がる。
あともう少ししたらこの味も堪能できないのだと思うと、じっくり噛み締めて食べなければならない気分になった。
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