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一度、何故自分がこんなに体が弱いのかと両親に訪ねたことがある。
父は眉を八の字にして、母は涙を流しながら「ごめんね」と壊れた機械のように繰り返していた。
母が謝る理由は分からなかったけれど、両親の様子から俺は絶対に尋ねてはならないことを言葉にしてしまったのだと、そこだけは理解出来た。
以後、その質問を両親にぶつけたことはない。
父も母も健康だ。
そして俺の後に産まれた二つ下の弟だって。
俺の身体が弱いのはきっと俺の責任なのだ。
そうじゃなかったら、神様ってやつが意地悪でもしたのだ。
幼い俺はそうやって無理矢理な理屈で自分を納得させて何とか生きていた。
二つ下の弟との仲は控えめに言っても良好とは言えなかった。
昔から病気がちな俺に両親は付きっきりで、弟を構ってやれないことに対してあいつは不満がっていた。
俺は俺で、健康な身体を持って産まれた弟に嫉妬にも似た感情を抱き、互いに相容れないような関係だったのだ。
見舞いについてくる弟はいつも不貞腐れたような顔で俺を黙ったまま睨みつけている。
時には見舞いを拒否して母に怒られたのか、目を真っ赤にしてやってくることもあった。
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