6 火曜日

2/20
前へ
/223ページ
次へ
学生や社会人で混み合う電車に何とか体を捩じ込ませつつ、咲羅に三車両目にいる旨を連絡する。 これだけ混雑していたらゆっくり会話も出来ないし、そもそも咲羅は俺がいる場所まで辿り着けるのだろうか。 人の波に車内の真ん中まで押し寄せられながらぼんやりと思う。 そうだ、明日から少し早い電車で行くことを提案してみよう。 勝手なイメージだけれど、あいつは朝が得意で夜は早く寝そうだ。 早めの電車だったらゆとりがあって落ち着けるだろう。 次の駅で順番待ちをする咲羅の姿を確認したけれど、やはり混雑しているため合流することはできなかった。 仕方なく高校の最寄り駅まで人混みに揉まれながら時を過ごす。 こんな僅かな時間も勿体なく思えてしまう程に、焦燥感に襲われていた。 一分、一秒がとても尊いものに感じて、本当にこれで俺の残された時間の過ごし方は正しいのかと、不安が塊になって押し寄せてくる。 そして確実に接近してくる死という現実が不安を助長させるのだ。
/223ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加