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理由は分からないけれど、泣きたい気分になって。
零れ落ちそうになった涙を、奥歯を噛み締めることで堪えた。
水の膜が張った瞳を覗かれないように視線を弁当に移してからゆっくり頷く。
隣から安堵したような息がつかれて、「じゃあ、線のこっち側仲間」と咲羅が嬉しそうに呟く。
「二人いれば、寂しくないね」
笑顔の咲羅に謝ろうとしてやめた。
そんなことをしたら、俺に起きていることを説明しなければならない。
いつかは知らせなければならないとしても、それは今じゃない。
俺は無理矢理に話題を変えて、空想を始める。
自分たちの足元に散らばる花びらたちが、急突風で舞い散って俺たちを包む。
目を開くとそこは神秘的な森の中で--。
そんな話を咲羅が楽しそうに聴いていた。
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