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◇
授業が全て終わり、荷物をまとめて教室を出る。
今日は誰にも呼び止められずに済んだし、前席の『黒澤』も朝以降は部活の話も振ってこなくてほっとした。
昇降口には既に咲羅が空を仰ぎながら待っていた。
駆け足で隣に並び、同じように空を見上げる。
どんよりとした雲に覆われて、周囲は昼間よりも暗くなっていた。
「雨降りそうだな」
「そうだね.....あ、傘持ってるから平気だよ」
寄り道は必須らしく俺は顔を綻ばせて彼女の隣を歩いた。
学校の近くにあるコンビニで、咲羅は定番のショートケーキ(散々悩んでそれか、とは言わない)、俺は目に入ったチョコレートケーキを購入する。
神社に辿り着くまで降りはしなかったが、雨の気配と匂いがした。
二人でお参りを済ませた後に奥のベンチへ腰掛ける。
「いただきまーす」
受け取ったショートケーキのカップを空けた咲羅が嬉しそうに口に運んでいく。
俺も同じように自分の分を空けて口に放り込んだ。
甘みが脳にまで染み渡って、朝からいろいろと思考を巡らした疲労感が癒されていく。
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