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17歳のカルテ
話は10年前に遡る。
当時17歳の娘のももが、友達のアヤが入院したので、お見舞いに行きたいから車を出してくれと言う。ももの幼馴染で私もよく知っている女の子だった。
いいよと返事しながら、あまり馴染みのない病院名に首をかしげた。車で20分ほどのご近所で、入院設備があるそれなりに大きな病院だろうに、聞いたことがない。
「アヤ、どうした?」
「手首切って薬飲みすぎた」
「あー……」
短く答えたももの目は暗かった。
行き先は、いわゆる精神病院だった。
私の娘は中学時代から荒れに荒れた。それはもう見事な中二病の発症である。母である私の不徳のいたすところとしか言いようがないが、中学から高校にかけて、何度も学校に呼び出され、あちこちに顰蹙を買い、時には警察で両手の指紋をがっつり採られる娘を横目で見ながら、ため息の毎日だった。
アヤはこの娘の友人なのだから、推して知るべしである。
ももとアヤともう一人加えたケイ。中学時代、この三バカ娘を知らない者は校内にいなかった。裏を返せばそれは、この3人が校内で浮きに浮きまくっていたということになるわけで、娘たちは互いを除けば友達がいない。
この話は、そんな三バカ娘のひとり、アヤの最低な恋が行き着く先の実話だ。
中学を卒業してバラバラの進路を選んだ3人だったが、揃って高校2年になっているはずのこの頃、ももは私とすったもんだした挙句、一年で高校を中退し、美容院で働き始めるという不良娘の王道を歩いていた。
そして、何がどうしてそうなったのか、アヤとケイは、キャバ嬢として華々しくデビューしていた。
親はどうしたとか未成年やんけとか、ツッコミどろこ満載である。とりあえず、開いた口が塞がらない私は、ももにすかさずこう言った。
「あんた、キャバに足突っ込んだら、なにがなんでも探し出して、店ごとソッコーで潰す」
未成年を抱えているキャバクラなんぞ、電話一本で事が済む。ももは「わかってるよ」と不機嫌にむくれた。
それはともかく、家庭内で居場所をなくしていたアヤは、わかりやすく、寄生虫のようなホスト崩れに入れあげた挙句、オーバードーズとリストカットを繰り返した。身体より心に問題のあるアヤは、ついに精神病院へ放り込まれたというわけだ。
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