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どれくらいぶりだろう。
地元を走る桃色の線を纏ったバスに揺られながら、記憶を辿るが、思い出せない。
天気予報を裏切ってくれた太陽が照らす、久しぶりの街を眺める。
20年前とちっとも変わってない、退屈そうな景色が流れていく。
ため息混じりに車内に目をやる。
立っている僕の前の席には、お腹を撫でながら微笑む妊婦が座っている。
その二つ後ろの席に座った中学生の男子二人は、手元のスマホを眺めながら、はしゃいでいた。
子供のスマホに違和感を感じる、古い考えの僕は、少し眉をひそめてしまう。
教育上、どうなのだろうか。
まぁ中学生は、半分大人のようなものだが。
しかし、車内を見渡すと、彼らだけでなく乗客のほとんどが、手元の画面を眺めていた。
まぁ、こんな退屈な街を眺めててもつまらないか。
僕がこの街に帰ってきたのは、体調が優れない父にかわり、いやいやながら実家の店を継ぐためだった。
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