揺れる車内

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時々止まるバス停では、ほとんどの人がドライバーの横に、カードをかざして下車していく。 こんな街のバスもハイテクになったものだ、と感心した。 僕の左手にはつり革、右手には「3」と記された乗車券が握られている。 印字された薄い「3」の文字を眺めていると、ふと最後にバスに乗った記憶が蘇ってきた。 中学2年の頃だ。 部活の練習試合で、隣町にある他校への行き帰りに乗ったのが最後だ。 そして、その時に犯した間違いも、一緒に蘇った。 僕は、3人の仲間とバス代を10円玉ばかりで払い、ドライバーの目をごまかした。 数十円少なくバス代を払い、呼び止められる前に、バスを降りたのだ。 理由は、帰りにコーヒー牛乳とマンハッタンを買いたくて、その分のお金を残すためだった。 あの頃はなぜかいつも空腹で、たった10円でも惜しかった。 今更ながら、悪いことをしたものだ。 半分大人は、とり消そう。 中学生は、ただの子供だ。 しかしドライバーは、あの動く歩道のように流れていく小銭と乗車券を、瞬時に計算できるのだろうか? 多かったり、少なかったりしたら、わざわざ呼び止めたり、追いかけたりするのだろうか? まぁ、どちらにせよ僕の悪事には変わりはないのだが。
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