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そう! そうなんだよ。なんでも完璧にしてしまえば、それは逆につまらないんだよ。一つの欠点がより得意分野に華をもたせ、かつ! 人格としてチャーミングさをもプラスさせると俺は思うわけなの!
「あまり得意な方じゃないから……」
心の論弁とは正反対に、俺はボソボソとカップの影で答えた。そんな俺に先生は柔らかい表情で「うんうん」と頷く。
「上手に出来ないと、なんで? って思うよね。そういうのが絵に出てる。きっと美術の時間のあいだ、つまんねーなって思ってるのかなーって」
「出て……んだ……」
「うんうん」
先生はなにが楽しいのかニコニコ頷いて、またコーヒーを一口飲んだ。
「あー。コーヒー飲むと吸いたくなるよねぇ~」
「え? 吸う?」
何を言い出すんだ。この教師は。
俄かに気持ちが焦り出す。
こともあろうに……ここは学校だぞ。いや、芸術方面に携わる人、アーチストっていうの? そういう人はストレスとか、発想や、テンション? そこらへんの観点からそういった物に手を出す人もいるのは、芸術分野が疎い俺でも知識として知ってはいるが、まさかこんな場所で、しかも教師で薬物を摂取する人物を目の当たりにするとは……。
「校内じゃ吸えないから、香りだけで我慢するか……」
ひっ!
校内で吸えない以前に持ち込みアウトだろっ!
目玉が零れ落ちそうになるほどに俺は目を見開いていた。先生は唇を尖らせ俯くと、白衣のポケットへ手を下ろしていく。
嘘だろ? マジかよっ! 俺どうしたらいいの!? やばいやばい俺そんな秘密知る度胸なんてこれっぽっちもないです!
喉と口の中の水分が一気に蒸発する。俺は口を閉じ、からっからの口内で唾液を何とか絞り出しゴクリと唾を飲み込んだ。ドクドク、ドクドクと鼓動が騒ぎ出す。
先生の手がポケットから出る。そこに握られていたのは茶色の小さな箱だった。それを鼻先へ押し付けて「クン」と嗅ぐ。
た……タバコ……?
フワッと漂うチョコレートのような香り。
「ん~。あまいね~」
先生は俺を見てニンマリと笑った。
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