とめどない僕ら。

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薄暗くなってきた部屋の電気をつけるより、温もる布団からのっそりと出てローテーブルのタバコに手を伸ばし火を着けた。 一息煙を吸い込むと、タバコを咥えたまま窓を開けた。少し冷えた空気が体を震わせた。 「…さむい…。」 モゾモゾと動く布団に目線をやると、布団から顔だけポンと出して文句を言うかわいい恋人がそうもらした。 さっきまで甘い声で目を潤ませて鳴いていたのに、この部屋に来た時のように眉間に皺を寄せてこちらを見ている。 まだご機嫌斜めのようだ。 「そう?でもタバコ吸うし、空気も入れ換えたいから。」 ふぅ、と、ため息混じりに煙を吐き出すと、恋人の眉間から皺は消え、枕に顔をグリグリと擦り付けた後に腰が重そうな動作でゆっくりと起き上がった。 「……世界中が一斉に瞬きする瞬間があればいいのに。」 「…え?」 頬にかかる髪を邪魔そうに掻き上げ、下を向きながら恋人は言った。 「なんで?」 「世界中の人が瞬きする瞬間ってさ、誰も僕らを見てないよ。」 「うん?」 「世界中がみんな瞬きしちゃえばさ、世界は真っ暗だよ。みんな目をつぶってるから。そしたらその瞬間はさ、僕らは世界に二人っきりになれるのに。」 世界中全人類が同時に瞬きする。 確かにそうなればその瞬間は、一瞬の闇に世界は支配される。
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