とめどない僕ら。

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確かに俺たちはお天道様の下を手を繋いで堂々と歩けるような間柄じゃない。 若い頃は世界に反発して見せつける事もあったがこの年になると人目が気になるし無駄に傷つきたくもない。体と同様、心の回復も衰えるのだ。だからそれと比例して処世術は身に付いたけども。 「その真っ暗な一瞬で何するの?」 「キスする。」 「(笑)」 かわいい恋人には5歳年上の兄がいる。この度その兄に、俺たちの関係がバレたのだ。 「笑わないでよ。」 「いや…ごめん、かわいくて。」 だから世界中全人類が同時に瞬きする瞬間があればいいなんて言い出したのだ。 部屋に来た時の彼は顔面蒼白だった。 バレちゃった…ごめんなさい、を 繰り返し、でも俺に隠さず説明してくれたのは何だか嬉しかった。 ここへ来る道中、不安に潰されそうにながらもどうにか堪えていた涙はドアノブに手をかけた瞬間ダムが壊れたようにあふれでて、それでも最後には別れたくないと強くキッパリと言う恋人が愛しくて堪らなかった。 「世界中が瞬きして、目を開く0.1秒の間だけ僕らのもの。0.1秒後には何も変わらない世界がまた動き出すよ。」 「でもキスするなら俺らも目をつぶってるんじゃない?」 「大丈夫。僕らだけ特別だから。」 「そうなの?」 「僕にとって"世界"は『僕ら』と『僕ら以外』だから。真っ暗な世界の中、『僕ら以外』が知らない世界で『僕ら』は二人っきりでキスをするの。」 「そりゃまた…」 極端な 半分だな。
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