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世界が『俺ら』か『それ以外』なんて、
なんて壮大で小さいのだろう。
チラリと上目遣いに俺の反応を伺う恋人は、遠慮がちにも側に来てほしいと訴えていた。
「ちょっと寝ようか。」
「え…?」
タバコを消して窓を閉めた。脱ぎ散らかされた服を拾い上げ、温もる布団に戻ると恋人の頭にスポッと服を着せた。
「君は夜勉強するんでしょ?だから一時間くらい寝て、そしたらご飯作るから食べて、そしたら送ってくから。」
「え…でも。」
「お兄さんに挨拶くらいするから。」
くしゃくしゃになった髪を整えていた手が止まり、恋人は眉が八の字に下がった。
「君とこういう事になった時にもう覚悟は決めてるから。あ、ご飯のリクエストは?」
瞬間、眉が上がった。ほんの一瞬。そんなに驚く事だろうか。
「お…おむらいす…。」
「了解。じゃあ寝よう。」
ほんの一瞬。動揺したらしい恋人の表情。
世界は瞬きをしただろうか。
「ほんとに…ほんとにいいの?」
「うん、いいよ。さ、じゃあもう寝るよ。」
そんな瞬間は訪れないだろうが、だから俺達は世界に隠れてキスをする。
「おやすみ、先生。」
「はい、おやすみ。」
世界の半分を 抱き締めながら。
end
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